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トランプ大統領に”NO”と言えるスペイン 背景と理由を解説

2月28日、アメリカとイスラエルがイランへの先制攻撃を行い、イランの最高指導者ハメネイ氏を殺害しました。

イランの核開発をめぐる問題を協議している最中に行われたこの攻撃に、世界の国々は衝撃を受けました。

もしイランが他国をこのように先に攻撃していたら、イランはおそらく極悪国家として欧米やその同盟国などから大きな批判を受けたことでしょう。しかし、実際はアメリカとイスラエルが先に攻撃をしかけました。これに対し、西欧諸国や日本、韓国などの国々はアメリカへの明確な批判を避ける姿勢を取っています。

こうした中、異彩を放っているのがスペインです。サンチェス首相は国民向け演説の中で次のように述べました。

人類の大惨事はこうして始まる。数百万人の運命を賭けたロシアンルー‌レットは許されない

スペイ‌ン政府の立場は4文字で要約できる。『戦争反対』だ

他の西欧諸国や日本が慎重姿勢を崩せない中で、なぜスペインだけがここまで明確な反対姿勢を取れるのでしょうか。本記事では、その背景と理由を初心者にも分かりやすく解説します。


スペインが示した具体的な拒否行動

国家間の軍事衝突において、他国の最高指導者を直接攻撃するという手法は極めて異例であり、国際社会に大きな衝撃を与えました。

中国などアメリカと対立する国はこうした攻撃は国際法違反だとして強く非難しています。一方で、多くの日本を含む西欧諸国は懸念を示しながらも、安全保障や経済関係を考え、自国の立場を明確にしていません。それはある意味で現実的な判断とも言えます。

しかし、スペインは違いました。今回の攻撃に対して明確に反対の立場を示し、「同盟国であっても支持できないものは支持しない」という姿勢を打ち出したのです。

スペインの姿勢は単なる声明にとどまりませんでした。実際の行動として、アメリカに対して強い拒否を示しています。

象徴的なのが、米軍によるスペイン国内基地の使用拒否です。通常、NATO加盟国は相互に軍事協力を行う関係にありますが、スペインは今回の作戦に関して自国領土の利用を認めませんでした。

この決定に対し、トランプ大統領は強く反発し、スペインとの貿易関係の見直し、いわば「貿易断絶」を示唆する発言まで行いました。これは外交的圧力としては極めて強いものです。それでもスペインは方針を変えていません。

これに対し、イギリスはキプロスにある基地をアメリカの求めに応じて、当初は渋っていたものの、結局利用を許可しました。


スペインは繰り返しトランプ大統領にNOを突きつけてきた

スペインの対米姿勢は、今回に限ったものではありません。むしろ、これまで一貫してトランプ大統領の政策に対して距離を取る場面が見られてきました。以下はその一例です。

  • NATO防衛費(5%要求)への強い抵抗
  • 対ベネズエラ政策など米国介入主義への批判
  • 対中経済関係の強化(米国の懸念を無視)
  • イスラエル向けアメリカの武器運搬船の入港拒否

1. 防衛費問題:NATO「5%」目標への明確な拒否

トランプ政権は同盟国に対し、従来のGDP比2% → 5% への防衛費引き上げを要求していました。しかしスペインはこれを強く拒否し、2.1%で十分かつ現実的として特例を獲得しています。これに対しトランプ氏はスペインを「フリーライダー」呼ばわりし、関税で制裁する可能性を示唆しました。


2. ベネズエラ介入を厳しく批判

サンチェス首相はトランプ大統領が軍を使ってベネズエラのマドゥーロ大統領を拘束した介入政策を強く非難し、
トランプ政権の軍事行動を「危険で悪い前例」と断じました。
これは EU 共同声明を待たず、いち早く非難したという点で象徴的です。


3.対中接近:アメリカの懸念を無視

スペインはアメリカの牽制にもかかわらず、中国との経済関係強化を続けています。
これはトランプ政権の対中包囲網に逆らう動きとみなされ、アメリカ側の不満を招いています。 


4.イスラエル向け武器輸送船の入港拒否

スペインはイスラエル向け武器を運ぶアメリカ関連船舶の寄港を拒否。
その結果、アメリカがスペインの海運に対する制限を検討する調査に着手したと報じられています。
スペインはアメリカがバックアップするイスラエルのガザ侵攻も強く批判しています。


スペインが"NO"と言える理由|サンチェス首相の政治思想とリーダーシップ

多くの国がアメリカに経済や安全保障の面で依存していて、アメリカのやることに”NO”と言えば、どのような仕返しがあるか心配して口をつぐむ中で、なぜスペインのサンチェス首相が独自の立場を貫けるのでしょうか。

そこにはいくつかの理由があります。

  • 中道左派〜社会民主主義的立場

サンチェス首相はスペイン社会労働党の党首であり、社会民主主義・進歩主義・多国間主義を重視する立場にあります。
国内政策では以下が特徴です:

  1. 社会保障の重視、格差是正などの福祉国家志向
  2. 多国間外交・EU重視の国際協調主義
  3. 移民に対して比較的寛容

もともとこのようなリベラルな考えの持ち主でありということに加えて国内世論の影響もあります。スペインでは反戦・反介入の意識が比較的強く、海外での軍事行動に対して慎重な国民感情があります。

また、スペインはドイツ・フランス・オランダなどに比べて貿易における対米比率が低い国です。
つまり、スペインはアメリカとの貿易への依存度が相対的に小さいと言えます。

こうした国民の支持と過度にアメリカに経済的に依存していない状況によって、サンチェス首相はアメリカに対してもはっきりものが言えるのです。


まとめ|スペインが進む新しい道

現在のトランプ政権の数々の外交政策について、多くの国が苦々しく思っていることは間違いありません。しかし、それをアメリカに直言できないのは、安全保障や経済についてアメリカに過度に依存している状況があるからです。

先日も記事にしたカナダのカーニー首相の言葉がここで思い出されます。

世界秩序の破裂、美しい物語の終焉(しゅうえん)、そして大国間の地政学が一切の制約を受けない残酷な現実の始まりについて話したい。

私たちは大国の競争が激化する時代に生きていることを日々思い知らされている。ルールに基づく秩序は衰えつつある。

古い秩序は戻らないが、それを嘆くべきではない
偽りをやめ、現実を直視し、国内で力を蓄え、共に行動する

カーニー首相は、もはやアメリカが世界秩序を守り、安全保障を与えてくれる時代は終わり、それぞれの国が戦略をもって、この大嵐の中で生き延びねばならないと指摘していました。

スペインも独自の戦略をもってこの新しい時代を生き抜こうとしているのかもしれません。


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